大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和58年(ラ)121号 決定

一二一号抗告人、一二三号相手方(以下「申立人」という。)

瀬ケ崎 真知子

一二一号相手方、一二三号抗告人(以下「相手方」という。)

瀬ケ崎 和一

主文

一  原審判を次のとおり変更する。

相手方は申立人に対し、婚姻費用の分担として、金二八万一二九〇円及び昭和五七年九月一日から別居期間中毎月末日限り一か月金八万円の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  相手方の本件抗告を棄却する。

三  抗告費用は全部相手方の負担とする。

理由

一  抗告の趣旨及び理由

1  申立人

別紙のとおり

2  相手方

(一)  原審判はこれを取り消す。との裁判を求める。

(二)  原審判には重大なる事実誤認並びに法令適用の誤りがある。

二  当裁判所の判断

当裁判所も、相手方は申立人に対し、婚姻費用の分担として、別居期間中月額金八万円ずつを毎月末日限り支払うべき義務があるものと判断する。その理由は、原審判四枚目表三、四行目の「本件調停の申立がなされた昭和五七年九月から」を「別居の始まつた昭和五七年五月一六日から」と改めるほか、原審判理由中第2の1ないし4記載のとおりであるから、これを引用する。

ところで、過去の婚姻費用の分担に関しては、夫婦が別居している場合、権利者から現実に請求を受けた時に初めて義務者の支払義務が発生すると解すべきではなく、事柄の性質上、義務者において、権利者が分担に関する支払を受けるべき状態にあることを知り、又は知ることを得べかりし時に発生するものと解するのを相当とする。本件の場合、夫婦げんかの末申立人が長女恵里子を連れて実家に帰り、夫婦の別居状態が始まつたのが昭和五七年五月一六日であつて、相手方はそのことを承知しているわけであるから、相手方の申立人に対する支払義務は右の日から発生しているものといわねばならない。そして、昭和五七年五月分の金額を日割計算すると、金四万一二九〇円となる。

したがつて、相手方は申立人に対し、原審判が支払を命じた分のほか、昭和五七年五月一六日から同年八月三一日までの分合計金二八万一二九〇円を過去の婚姻費用分担金として支払うべきものである。ほかに、原審判に違法又は不当の点は認められない。

してみると、相手方の本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきであるが、申立人の本件抗告は右の限度で理由があるので、右と結論を異にする原審判を変更し、当裁判所において本件につき審判に代わる裁判をするのを相当と認め、抗告費用は全部相手方に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 荻田健治郎 裁判官 掘口武彦 岨野悌介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例